レオパレス21の違法建築(建築基準法違反)問題が大きな社会問題になっております。
最近になってこの問題がクローズアップされておりますが、レオパレス21のプレスリリースでは、1996年ころから一部の建築基準法違反があった事が確認されていると発表されております。
そもそも今回のレオパレス21の建築基準法違反とはどのようなものであるかと云う事を整理したいと思います。
- 住戸界壁の遮音性能の基準未達違反(建設省告示第1827号)
- 住戸界壁の構造基準違反
共同住宅の界壁は、準耐火構造として小屋裏または天井裏に達せしめなければならない(建築基準法施行令だい114条第1項) - 外壁の構造が建設大臣認定とは不適合違反
- 天井の構造が1時間耐火構造違反
以上のように、共同住宅と云う特殊建築物であるにもかかわらず、人命の安全第一と云う最大の使命をないがしろにした大きな問題である。
準耐火構造とは
準耐火構造とは、火熱が加えられた場合に、加熱開始後45分間、構造耐力上支障のある変形、溶裕、破壊等の損傷を生じない構造を言います。
共同住宅の各戸の界壁
住戸の界壁(住戸と住戸との間の境壁)の役割としては、法第30条の「長屋または共同住宅の各戸の界壁」で規定される遮音性能、法第36条「一般構造・防火構造の技術基準」で規定される防火性能について規定されております。
1)の(遮音性能の基準未達違反)問題については界壁構造部内部の充填剤が基準で決められたものではない
2)の(住戸界壁の構造基準違反)問題については
3)の(外壁の構造基準違反)問題については
4)の(天井の構造が1時間耐火基準を満たしていない)問題については
防火建材の間違い使用(意図的 材質変更)はもとより、ボードの二重貼りをしていないのは、明らかな手抜き工事と思われます。これでは、室内で火災が発生した場合には直ちに天井面から天井裏に火が回り、隣室への延焼は免れません。ましてや、小屋裏の防火界壁も設置していないとなれば、ひとたび火災が発生したら大惨事につながりかねません。
以上、今回のレオパレス21建築違反建物の問題になっている部分の概要を図説いたしましたが、これらの事象はこれだけ大規模になってくると、もちろん現場管理者の管理方法にも問題は有りますが、現場担当者が勝手にできる問題ではなく会社全体の問題だと捉えます。
そもそも、レオパレス21の建物はシリーズものとしてシステム化されているものであり、現場ごとの部品・部材対応が難しいものになっていると思います。現在問題になっている事項は、建築を管理する専門家であれば直ちに気の付く事ばかりです。
20年以上前からレオパレス21の共同住宅では「隣の声が筒抜けになっている」と云うようなエンドユーザーからの声を聴かないばかりか、黙々として問題の住宅を作り続けている事に会社全体の体質を感じます。
今回の問題は、会社全体として以下の項目に抵触すると考えられます
- コストの圧縮による順法精神の欠如
- 工期の短縮による順法精神の欠如
- 資金の早期回転・回収を目的とした順法精神の欠如
- 社員教育の不足(コンプライアンス教育・技術教育・現場運営能力開発 等)
- 熟練技術者不足に対する対応不足
- 労務・資材も含めた協力会社への教育不足
- シリーズとして販売している不良品(欠陥住宅)を見付けられない社内体制
現状では、今起きている問題に対しての対処・応急措置だけに明け暮れておりますが、根本的な問題解決を根治しなければ、同じことが再び繰り返されるのではないでしょうか?
以上
NPO日本住宅性能検査協会
理事・一級建築士 木村健二