大和ハウス工業の戸建住宅・賃貸住宅が建築基準に関して不適合であったとのニュースが連日マスコミ等で報道されております。

令和元年6月17日には同社の「外部調査委員会」から【調査報告書】発表されました。

そもそも、この問題はどのような事で問題になったかという事について整理してみようと思います。

現在、戸建住宅・賃貸住宅の建築基準に関する不適合問題として注目されている事項は、以下の3項目であります。

  • 独立基礎不適合問題
  • L字型受柱不適合問題
  • 防火基準不適合問題

外部調査委員会の報告書によれば、大和ハウス工業の戸建住宅・賃貸住宅は以前から量産住宅として数多く建設されていました。

平成12年6月1日より改正建築基準法が施行された事に伴い、型式適合認定・型式部材等製造者認証制度が導入されました。

大和ハウス工業は、その型式適合認定申請を数回にわたって行い、平成14年5月31日以降は全て型式適合認定制度に切り替えるように全社に指示を出していたとの事です。

然し、その過程において全社内で【型式適合認定制度】についての認識が社内共有されず、従来の方法で問題ないのではないかとの認識で工事が進められ、各部門においても誰も疑義を持たずに経過していたと云うのが調査結果の様です。

建築物(の部分)が、構造耐力・防火・避難など一連の規定に適合することをあらかじめ国土交通大臣(指定認定機関が指定されている場合は同機関)が認定することにより、建築確認に於いて一連の規定の審査が省略されるという制度であります。

故に、この【型式適合認定制度】を利用する場合には【型式適合認定】を取得している仕様しか用いる事が出来ません。

今回の場合には、上記にも記載したように型式適合認定制度を利用して型式適合認定を受けていながら、型式適合認定以外の仕様で施工をしてしまったという事が問題になっているわけです。

個別不適合では

1.独立基礎不適合問題

型式適合認定を取得している独立基礎の仕様では、基礎底面からの高さが620mmとなっています。

実際では、基礎底面からの高さが725mmとなっています。

2.L字型受柱不適合問題

型式適合認定を取得している外廊下のL字型受柱の仕様では、2階外部片廊下を支える柱を独立した仕様としております。

実際では、2階外部片廊下を支える柱をL字型受柱としております。

 

 

3.防火基準不適合問題

前項のL字型受柱は、本来耐火被覆による防耐火処置を講じなければならないが、その処置がなされていなかった。L字型受柱を耐火被覆材で覆い、その外側に不燃材料を貼り付ける。外部廊下を支える梁については、1階廊下の軒天井と同じような不燃材で覆う事が必要。

 

大和ハウス工業の令和01年6月17日に「外部調査委員会」から発表された【調査報告書】によると、

a.独立基礎不適合問題について

「構造計算による安全性の確認」をし、「基礎部分の実験による確認」をして【独立基礎不適合建物の建築基準法に定める安全性を確認した】となっております。

b.L字型受柱不適合問題

【L字型受柱の部材形状及び荷重条件ごとに、L字型受柱に生じる応力が許容応力度以内である事をもってL字型受柱に関して建築基準法が定める構造安全性を確認した】

【L字型受柱不適合建物についても安全性を確認した】

となっております。

c.防火基準不適合問題

防火基準不適合建物については、

  • 耐火被覆材(繊維混入ケイ酸カルシウム版)でL字型受柱を加工用に配置し、直接 接着固定した。
  • その外側に、不燃材料仕上げ材を取り付ける仕様を標準とした。
  • 2階部分外側廊下を直接支える梁にあたっては、1階廊下の天井を仕上げている材料(軒天)と同材料(不燃材)で覆う仕様を標準とした。

上記、【防火基準不適合建物については礼を元年610日までに、現在判明している防火基準不適合建物のすべての改修工事を完了した】との発表がされております。

以上の事から、

今回の大和ハウス工業の『戸建住宅・賃貸住宅における建築基準に関する不適合問題』については、本来 【型式適合認定制度】により【型式適合認定】を受けた物件では、【型式適合認定】を取得している仕様でしか認定されないことを認知していなかった。

【型式適合認定制度】を利用した【型式適合認定】を取得の建築案件に携わる社員の間でその事を十分認識されずに、従来の方法で施工されてしまった事が「外部調査委員会」からの【調査報告書】でも報告されているように、今回の大きな原因かと思われます。

尚、今回の『戸建住宅・賃貸住宅における建築基準に関する不適合問題』については、【型式適合認定制度】の運用の問題であり、改修すべき事項も明確に判明し、対応が既に改修済となっている事項や安全性の確認もなされている事から、早急に再発防止策が実行される事が望まれるところであります。

 

以 上

 

NPO日本住宅性能検査協会
一級建築士  木村健二